「雇用契約書があるから大丈夫」その油断が命取り
社長、従業員を雇う際、「うちは口約束でも信頼関係があるから」なんて言っていませんか?あるいは「雇用契約書にサインをもらったから完璧だ」と安心していませんか?
実は、「労働条件通知書」の交付は法律(労働基準法第15条)で定められた絶対の義務です。 これを怠っている会社は、労務トラブルが起きた際、ボクシングで言えば「ノーガード状態」でリングに立っているのと同じです。1,000件超の修羅場を見てきた実務家の視点から、そのリスクの正体を暴きます。
「労働条件通知書」と「雇用契約書」の決定的な違い
よく混同されますが、役割が違います。
- 労働条件通知書:会社から労働者へ「うちはこういう条件で雇います」と一方的に通知する書類(法律で義務化)。
- 雇用契約書:会社と本人が「この内容で合意しました」と双方が署名捺印する書類。
実務上は、これらを一枚にまとめた**「労働条件通知書 兼 雇用契約書」**を作るのが最強の防衛策です。なぜなら、「通知した証拠」と「合意した証拠」が同時に手に入るからです。書」**を作るのが最強の防衛策です。なぜなら、「通知した証拠」と「合意した証拠」が同時に手に入るからです。
交付しなかった会社を待つ「3つの地獄」
① 労基署の是正勧告:一度マークされると逃げられない
従業員が一人でも「条件が違う」と労基署に駆け込めば、即座に調査が入ります。通知書がないだけで「法律違反」が確定し、是正指導の対象となります。
実際、私がいた税金滞納の現場でも、一度でも滞納が起きると即座に管理システムに登録され、これまで滞納がなかった人とは異なるレベルのチェック体制に移行されます。どの世界でも同じですが、一度失った信頼関係を取り戻すのは至難の業なのです。
② 言った・言わないの「泥沼論争」
- 「残業はないと聞いていた」
- 「土日休みだと思っていた」
- 「試用期間なんて聞いていない」
トラブルの9割は、この「認識のズレ」から始まります。通知書という「書面」がない以上、裁判や紛争になれば、弱者とされる「労働者の主張」が通りやすくなるのが今の日本の現実です。
③ ミスマッチな社員を「辞めさせられない」
「思っていた能力がない」「態度が悪い」。そんな時、事前に「試用期間」や「更新の判断基準」を通知書で明示していなければ、会社側の主張は極めて弱くなります。「契約の前提」を提示していない以上、会社は相手の言いなりになるリスクを抱えるのです。

実務でよくある「致命的な記載漏れ」
雛形を使っているだけでは防げない、落とし穴があります。
- 固定残業代の内訳 → 「月給に含む」だけでは不十分。基本給がいくらで、何時間分の残業代がいくらなのか。これを明記しないと、残業代の二重払いが発生します。
- 「更新の有無」と「その基準」 → 有期契約の場合、これを書いていないと「ずっと雇ってもらえると思った」と期待権が発生し、雇止めができなくなります。
交付のタイミングは「入社前」が鉄則
労働条件通知書は、原則として**労働契約の締結時(入社前)**までに交付する必要があります。
- ベスト:内定承諾時の「入社前」
- ベター:入社日の「始業直後」
- 期限:遅くとも「入社日当日」
働き始めてから渡すのでは遅すぎます。「そんな条件なら入らなかった」と言われたら、そこまでの採用コストと教育時間はすべてドブに捨てることになります。
まとめ:通知書は「従業員のため」ではなく「会社を守るため」に書く
労働条件通知書を「面倒な事務作業」だと思っているなら、今すぐその考えを捨ててください。これは、**万が一のトラブルの際に、社長と会社を守るための「最強の証拠」**です。
- 雛形を漫然と使っていないか?
- 自社の実態(残業や休日)とズレていないか?
- 変更があった際に、更新を怠っていないか?
少しでも不安があるなら、一度プロのチェックを受けてください。行政の内側を知り、数々の「証拠の重要性」を叩き込まれてきた私が、貴社の防衛ラインを再構築します。
「あの時、一枚書いておけばよかった」と後悔する前に。
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