【2026年最新・労基法改正】有休を取ると手取りが減る!?「通常賃金方式」原則統一と賃金規定の見直し

「社員が有給休暇を取ったら、その日の給料は普段通り払っておけば大丈夫でしょ?」

そう思われている経営者や人事担当者の方、実は会社の就業規則や賃金規定の書き方ひとつで、従業員の有休取得時に『手取りが6割程度まで減る』構造になり、労基署からの是正勧告や未払い賃金トラブルに直面するリスクがあることをご知でしょうか。

現在、厚生労働省の労働基準関係法制研究会などで議論が進む労働基準法の大改正において、見直しの対象となっているのが「有給休暇を取得した日の賃金算定方法の原則統一(一本化)」です。

今回は、なぜ有休時の賃金計算で「6割まで目減りするトラブル」が起きるのか、具体例を交えて解説するとともに、会社が今すぐ行うべき賃金規定の見直しポイントを社会保険労務士がわかりやすく解説します。

1. そもそも有給休暇の賃金計算には「3つの種類」がある

現行の労働基準法第39条第9項では、有給休暇を取得した日に支払う賃金について、就業規則等で定めることにより以下の3つのいずれかの方法から選択できるとされています。

  1. 通常労働した場合に支払われる通常の賃金(通常賃金方式)
    • いつも通り出勤して働いたものとして計算する方法。多くの企業(約9割)がこの方式を採用しています。
  2. 平均賃金(平均賃金方式)
    • 直近3ヶ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の「総日数(カレンダーの暦日数)」で割って算出する方法。
  3. 健康保険の標準報酬日額(標準報酬日額方式)
    • 社会保険料の計算で使う標準報酬月額を30で割った額。
      ※事前の労使協定が必要です。

一見すると「どれを選んでも問題ない」ように思えますが、実は

②平均賃金方式

を採用している場合に大きな計算の罠が存在します。

2. なぜ「平均賃金」だと手取りが6割まで減ってしまうのか?

現行法で認められている「平均賃金方式」で計算すると、「有給休暇を取得したほうが、普通に働くより給料が安くなる」という不利益が発生するケースが多発しています。

🚨 正社員でも発生する「暦日数割」の罠

平均賃金は、直近3ヶ月の賃金総額を「実際の労働日数」ではなく「カレンダーの総日数(暦日数:約90日)」で割って計算します。 月給制の正社員の場合、1ヶ月の所定労働日数が20日前後であっても、割り算の分母は「30日や31日」になるため、日当換算すると通常の日給(1日分)よりも約6割〜7割程度まで金額が下がる現象が起きます。

【計算例:月給30万円の正社員の場合(直近3ヶ月:90万円)】

  • 通常働いた場合の日給: 30万円 ÷ 20日 = 15,000円
  • 平均賃金で計算した有休1日分の手当: 90万円 ÷ 92日(直近3ヶ月の暦日数)= 約9,782円

結果: 有給休暇を1日取ると、通常働いた日と比べて**約5,200円(通常時の約65%に目減り)**損することになります。

🚨 パート・アルバイトにおける「6割の最低保障額」ルール

時給制や日給制のパート・アルバイトに対して平均賃金方式を適用する場合、勤務日数が少ないと「暦日数割」によって平均賃金が極端に低くなってしまいます。これを防ぐため、労働基準法(第12条第1項但書)により「直近3ヶ月の賃金総額 ÷ 実労働日数 × 60%(6割)」を下回ってはならないという最低保障額が定められています。

【計算例:時給1,200円・週2日勤務(1日5時間)のパートの場合】

(直近3ヶ月:実労働日数24日 / 総給与144,000円 / 暦日数92日)

  • ① 通常の平均賃金(原則): 144,000円 ÷ 92日(暦日数)= 1,565円
  • ② 最低保障額の計算(例外): (144,000円 ÷ 24日) × 60% = 3,600円

結果: ①(1,565円)が最低保障額(3,600円)を下回るため、有休1日あたりの手当は②の3,600円を支払う必要があります。

※この場合でも、通常働いた際の日給(1,200円×5時間=6,000円)と比較すると、**通常時より4割引かれた金額(6割の給与)**しか支払われません。

このように、就業規則で「平均賃金による」と定めている場合、正社員であれパートであれ、有休を取ることで「通常働いた時の6割程度の給料しか払われない」という事態が構造的に発生してしまうのです。

こうした不利益や複雑な計算による現場の混乱を防ぐため、今回の法改正議論では「有給休暇取得時の賃金算定は、原則として『通常労働した場合の賃金(通常賃金方式)』に一本化・統一する」方向で調整が進められています。

3. 会社が放置すると発生する「2大リスク」

自社の就業規則や給料計算ルールにおいて、有給休暇の賃金計算を曖昧にしている会社は、以下のリスクを抱え込むことになります。

  • リスク①:賃金規定の「計算式ミス」による未払い賃金の一括請求
    就業規則に「有給休暇の賃金は平均賃金による」と書いていながら、実際の給与計算では「基本給÷21日」などの適当な計算を行っている会社が散見されます。計算ロジックと規定に不整合があると、過去3年分に遡って賃金の差額請求(未払い賃金)が発生するリスクがあります。
  • リスク②:歩合給・手当の取り扱いをめぐる労使トラブル
    「出来高制(歩合給)」の営業職やインセンティブ比率の高い職種において、有休取得日の賃金をどのように算出するかが就業規則に明記されていないと、「有休を取った月だけ手取りが激減した」として従業員との感情的対立や労基署への駆け込みに直面します。

4. 経営者・人事担当者が今すぐやるべき「3つの実務対策」

法改正で「通常賃金方式への統一」が義務化される前に、自社の就業規則と給与計算システムを点検・アップデートしておきましょう。

  • 対策①:就業規則(賃金規定)の「有給休暇の給与」条文をチェックする
    自社の就業規則を開き、有給休暇の賃金についてどのように記載されているか確認してください。
    【推奨される規定例(通常賃金方式)】
    第〇条(年次有給休暇の賃金)年次有給休暇の期間については、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。
    もし「平均賃金とする」や「標準報酬日額とする」と書かれている場合は、今後の法改正を見据えて「通常の賃金」へ改定することをお勧めします。
  • 対策②:各種手当(皆勤手当・インセンティブなど)の不利益取り扱いをなくす
    労働基準法第136条では、「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはならない」と定められています。
    • NG例: 有休を取ったことを理由に「皆勤手当」を不支給にするNG例: 有休取得日を「欠勤扱い」として評価を下げる
    こうした運用が残っていないか、社内の手当支給基準を再点検しましょう。
  • 対策③:給与計算ソフトの集計設定を確認する
    現在お使いの給与計算ソフトやクラウド給与システムにおいて、有給休暇を取得した日の支給額が「通常の勤務日と同じ金額(基本給+各種手当)」として正しく自動計算されているか確認します。

まとめ:有休の計算ルールを見直し、安心して休める職場へ

労基法改正の大きなトレンドは、「不透明・不合理な賃金減額の排除」「労働者が安心して権利を行使できる環境づくり」です。

有給休暇の賃金計算という一見マニアックなテーマですが、ここを正しく整備しておくことで、労務トラブルの未然防止だけでなく、求職者や社員に対する「クリーンで働きやすい会社」という強力なアピールになります。

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