算定基礎届とは何か
算定基礎届とは、毎年1回、被保険者の標準報酬月額を見直すために提出する届出書です。いわゆる「定時決定」と呼ばれる手続きで、社会保険料を適正な金額に調整するために行われます。
対象となるのは、健康保険と厚生年金保険に加入している被保険者です。原則として、7月1日現在で在籍している被保険者について提出します。
提出時期は毎年7月10日まで。労働保険の年度更新と時期が重なるため、6〜7月は労務担当者にとって最も忙しい時期のひとつです。
同じ時期に行う「労働保険の年度更新」とあわせて確認しておくと、6〜7月の実務全体が整理できます。
▶ 労働保険の年度更新についてはこちら

なぜ算定基礎届が必要なのか
社会保険料は「標準報酬月額」をもとに計算されます。この標準報酬月額は、原則として毎年4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額によって決定されます。
給与改定や昇給、残業の増減などがあると、実際の報酬額は変動します。そのままにしておくと、実態と保険料がズレてしまいます。
そのズレを調整するのが算定基礎届です。
適正な標準報酬月額に見直すことで、従業員本人の将来の年金額や傷病手当金などの給付額にも影響します。単なる会社の事務手続きではなく、従業員の生活に直結する重要な届出です。
算定の対象となる報酬とは
算定の対象となるのは、4月・5月・6月に「支払った」報酬です。支給日ベースで判断します。
対象となる報酬には次のようなものが含まれます。
・基本給
・役職手当や資格手当
・通勤手当
・残業代
・住宅手当
一方で、慶弔見舞金や出張旅費など、労働の対償ではないものは原則として含まれません。
ここで注意が必要なのは「残業代の変動」です。繁忙期がこの3か月に集中していると、標準報酬月額が高く決定される可能性があります。
算定基礎届の基本的な流れ
① 対象者の確認
7月1日現在で在籍している被保険者が原則対象です。ただし、6月1日以降に資格取得した方や、すでに随時改定(月額変更届)の対象となっている方などは除かれる場合があります。
② 報酬の集計
4〜6月の各月の報酬額を正確に集計します。支払基礎日数が17日未満の月がある場合は、その取り扱いにも注意が必要です。
③ 標準報酬月額の決定と届出
3か月の平均額を算出し、該当する等級に当てはめます。作成した算定基礎届を提出し、9月分(10月納付分)から新しい保険料が適用されます。
よくあるミスと注意点
算定基礎届で多いのは、報酬の計上漏れです。特に通勤手当を除外してしまうケースは少なくありません。
また、支払基礎日数の確認不足もミスにつながります。パート社員など勤務日数が少ない場合は、適用要件を慎重に判断する必要があります。
さらに、昇給によって大きく報酬が変動している場合、本来は随時改定(月額変更届)の対象となるケースもあります。定時決定だけで処理してしまうと、後から修正が必要になることもあります。
経営者が押さえておくべきポイント
算定基礎届は単なる届出ではなく、人件費管理の重要なデータです。
標準報酬月額が上がれば、会社負担分の社会保険料も増加します。従業員が増えている企業や、賃上げを実施している企業では、年間の保険料負担をあらかじめ試算しておくことが重要です。
また、従業員から「社会保険料が上がった」と相談を受けることもあります。その際に仕組みを説明できる体制を整えておくことが、信頼関係の維持につながります。
また、昇給や給与改定があった場合は、定時決定ではなく「月額変更届(随時改定)」の対象になることがあります。違いを正しく理解しておきましょう。
▶ 月額変更届(随時改定)についてはこちら

まとめ
算定基礎届は、社会保険料を適正に見直すための重要な手続きです。
・4〜6月の報酬を正確に集計する
・対象者の確認を丁寧に行う
・随時改定との違いを理解する
この3点が実務上のポイントです。
6〜7月は年度更新と並ぶ繁忙期です。手続きを単なる作業で終わらせず、人件費管理や制度理解の機会として活用することが、安定した労務管理につながります。

コメント