初めて従業員を雇うとき、多くの事業主の方が
「人手が足りないから、とりあえず雇おう」
と考えがちです。
しかし、労務の世界では**「雇う前にどう決めたか」**が、その後のトラブルを大きく左右します。
実際、相談の多くは「雇ってから困った」というケースです。
この記事では、初めて従業員を雇う事業主の方が、最低限決めておくべき5つのポイントを、社会保険労務士の視点から分かりやすく解説します。
1.雇用形態をどうするか(正社員・パート・アルバイト)
まず決めるべきなのは、どの雇用形態で雇うのかです。
正社員、パート、アルバイトという呼び方に明確な法律上の定義はありませんが、労働基準法は原則すべての「労働者」に適用されます。
「パートだから」「短時間だから」といって、
・残業代を払わない
・解雇を自由にできる
といったことは認められません。
また、「業務委託にすれば楽」と考えるケースもありますが、実態が雇用と同じであれば、後から労働者と判断されるリスクがあります。
雇用形態はコストの問題ではなく、リスク管理の問題として考えることが重要です。
2.労働時間・休日をどうするか
次に重要なのが、労働時間と休日の決め方です。
最低限、以下は明確にしておく必要があります。
- 始業時刻と終業時刻
- 休憩時間
- 休日(週1日、または4週4日以上)
「忙しいときは残ってもらう」「手が空いたら早く帰ってもらう」
といった曖昧な運用は、後々トラブルになりやすいポイントです。
特に注意したいのが残業です。
事前にルールを決めていない残業は、事業主側の負担が大きくなります。
小規模事業者こそ、シンプルで分かりやすい時間管理が大切です。
3.賃金の決め方(時給・月給・残業代)
賃金については、「いくら払うか」だけでなく、どう払うかが重要です。
最低限、次の点は決めておきましょう。
- 時給か月給か
- 残業代の計算方法
- 賃金の締日と支払日
よくある誤解が、「残業代込みにしているから大丈夫」という考え方です。
いわゆる固定残業代は、要件を満たさないと無効になる可能性があります。
賃金トラブルは、金額そのものよりも、説明不足や認識のズレから起きるケースがほとんどです。
最初にきちんと説明できる形にしておくことが、最大の予防策になります。
4.社会保険・労働保険の加入をどうするか
従業員を雇うと、保険の手続きが発生します。
特に重要なのは以下の3つです。
- 労災保険:原則、1人でも雇えば必須
- 雇用保険:週20時間以上などの要件あり
- 社会保険:法人は原則強制加入
「うちは小さいから」「短期間だから」といった理由で未加入のままにしていると、
後からさかのぼって加入指導を受けることもあります。
保険関係は後回しにせず、雇う前の段階で整理しておくことが安心につながります。
5.雇用契約をどう残すか(口約束はNG)
最後に、必ず押さえておきたいのが書面の整備です。
法律上、事業主は労働条件を書面で明示する義務があります。
口約束だけでの雇用は、トラブル時に事業主側が圧倒的に不利になります。
最低限、以下を記載した書面を用意しましょう。
- 雇用形態
- 労働時間・休日
- 賃金
- 契約期間(ある場合)
インターネット上のテンプレートをそのまま使うケースも多いですが、実態に合わない契約書はかえって危険です。
まとめ|「雇う前」に決めることが最大のトラブル対策
初めて従業員を雇うとき、すべてを完璧に整える必要はありません。
しかし、何も決めないまま雇うことだけは避けるべきです。
- 雇用形態
- 労働時間・休日
- 賃金
- 保険
- 契約書
この5つを事前に整理するだけで、将来のリスクは大きく下がります。
状況によって判断が難しい場合もありますので、不安がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
👉 初めての雇用に関するご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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