パワハラは、明らかな暴力や暴言だけではありません。
実務で最も多いのは、「指導のつもり」が問題になるケースです。
企業側として重要なのは、「自分の意図」ではなく「客観的にどう評価されるか」という視点です。今回は、判断が分かれやすい行動の境界線を整理します。
強い口調での叱責はどこまで許されるのか
部下のミスに対して、強い口調で注意すること自体が直ちに違法になるわけではありません。
しかし、次のような場合はリスクが高まります。
・感情的に怒鳴る
・長時間にわたり執拗に叱責する
・人格を否定する言葉を含む
業務改善のための指導であれば問題ありません。
しかし、「なぜできないんだ」「本当に社会人か」など人格に踏み込む発言はパワハラと評価されやすくなります。
ポイントは、
× 人を否定する
○ 行動を改善させる
この違いです。
人前で叱るのはNGなのか
会議中や他の社員の前で注意する場面は現実にあります。
必ずしも全てが違法ではありません。
ただし、以下のような場合は問題になります。
・必要以上に大人数の前で叱責する
・見せしめのような言動をとる
・全社員へのメールで名指し批判をする
業務上の注意であっても、「公開処刑」のような形になると精神的苦痛が大きくなります。
改善を目的とするなら、原則は個別指導です。
公開の場で行う必要が本当にあるのか、一度立ち止まることが重要です。
業務量の増減はどこからがパワハラか
業務配分は会社の裁量です。
しかし、その裁量にも限界があります。
過大なケース
・明らかに終わらない量を恒常的に与える
・体調不良を訴えても配慮しない
・未経験業務を十分な指導なしで押し付ける
過小なケース
・仕事を与えず放置する
・単純作業だけを繰り返し与える
・実質的に能力発揮の機会を奪う
特に過小評価型のケースは見落とされがちですが、
「成長機会の剥奪」も精神的ダメージにつながります。
重要なのは、業務上の合理性があるかどうかです。
「厳しく育てる」は通用するのか
「自分も厳しく育てられた」
この考え方は、現在では通用しにくくなっています。
裁判例や行政指導では、
・社会通念上相当か
・継続性があるか
・精神的苦痛の程度
といった客観基準で判断されます。
昔は許容されていた指導方法でも、今はリスクになる可能性があります。
時代の変化を前提にマネジメントを見直す必要があります。
判断のための3つのチェックポイント
実務で迷ったときは、次の3点で考えてください。
- 業務上の必要性は明確か
- 方法は相当な範囲か
- 相手の尊厳を侵害していないか
この3つを満たしていれば、原則として正当な指導といえます。
逆に、感情が前面に出ている場合は要注意です。
怒りは一瞬ですが、トラブルは長期化します。
企業がとるべき予防策
境界線が曖昧だからこそ、ルール化が重要です。
・指導マニュアルの整備
・管理職研修の実施
・相談窓口の明確化
これらを整えておくことで、「無自覚なパワハラ」を防ぐことができます。
管理職の力量は、強さではなく冷静さです。
組織を守るのは、感情ではなく仕組みです。
まとめ
パワハラかどうかは、「言った側」ではなく「客観的評価」で判断されます。
強い指導が必要な場面はあります。
しかし、人格否定や公開叱責、過剰な業務負荷はリスクが高い行為です。
迷ったときは、
「それは改善のためか、それとも感情か」
この問いを自分に投げかけてください。
次回は、無自覚にやってしまいがちな“日常の行動”について解説します。

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